誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
シャルはルイスのことを友達だと思っている。だからこそ仕事以外の時間をルイスと共有したくてこうしてサボってみたりするのだが、ルイスは喜ぶどころか、心の内では怒っているようにも見える。
怒っているならそう言えばいいのに、ルイスはそうしない。ルイスだけではない。シャルの周りの人間は皆そうだった。
「王子なんて辞めたい。そしたら皆、普通に俺と接してくれるんだろうし……。嫌だよ、こんな生活」
シャルのつぶやきに、ルイスは何も答えなかった。
その時である。何の前触れもなく空中が真っ白な光を放ったのは――。
晴れ渡る空が庭園を明るく包む。青一色の綺麗な空にひとつの穴が開いたみたいに、放射線状の白い光が降り注いだ。
あまりの眩しさに、シャルとルイスはかたく目をつむった。光はすぐに消える。
「何が起きた!?」
「シャル様、危険です、お下がり下さい」
当時、シャルはまだ魔法を使えなかった。数いる城の人間の中で唯一魔法を習得していたルイスは、突然現れ瞬く間に消えた光の正体を敵の侵入だと判断し、シャルを守る体勢を取る。