誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
しかし、それは敵ではなかった。
闖入者(ちんにゅうしゃ)には違いない。見てくれも珍しくこの国の人間でないのはたしか。シャルもルイスも呆気にとられる。
闖入者は二名。少女一人。少年一人。どちらもシャル達より年下なのは明らかで、少年の方に至っては十代にも満たない幼い子供である。
これまで外敵による突然の侵入は時折あったが、こんな無垢そうな侵入者はいなかった。
「わあ!ここが夢の世界かぁ!」
十代いくかいかないかと思われる少女はその幼い顔に満面の笑みを浮かべ元気にはしゃぐ。
「お姉ちゃん、おまじない成功したね!」
少女の弟なのだろうか。少年は一緒にいる少女に尊敬のまなざしを向けている。
なぜこの二人がはしゃいでいるのかは分からないが、見るに、こことは違う場所から空間転移してきたようだ。前代未聞の出来事。
ルイスは動揺しつつも冷静に尋ねる。
「あなた方はいったいどちら様でしょう?どういった方法でこちらへいらっしゃったのですか?」
燕尾(えんび)服をまとう執事姿のルイスをキラキラ輝く瞳で見上げ、少女は言った。
「私は神蔵あいな。この子は弟の龍河(りゅうが)です。おまじないを使ってここに来ました。ここは夢の世界ですよね?」
「えっと……。夢の世界ではなく、こちらはロールシャイン王国の国王様が管理されているカスティタ城の庭園になります」
少女あいなの言葉にルイスは困惑し、たどたどしくそう告げるのがやっとだった。