誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
ただ、ハロルドは妙にシャルに興味を示しており、その様子は友人レベルを越えている感じもするため、ルイスはそれが気がかりだった。
「私達の世界では同性同士の婚姻が認められており、ロールシャイン王国も例外ではありません。もしかしたら、ハロルド様は将来シャル様の婿になりたいと考えていらっしゃるのではないでしょうか……」
「ちょ!何を言ってる!?俺は男に興味ナイぞ!!」
「ええ、シャル様はそうでしょう。しかし、ハロルド様の胸の内は分かりません。私は深く考えてしまうのですよ、シャル様の立場を守る者のクセなのです」
「熱心に考えてくれるのは嬉しいけど、なんだかなー……」
シャルは、あいなの寝顔をじっと見つめた。
「あいなは自由なのかな……」
「と、言いますと?」
「結婚とか、そういう相手を決める権利、みたいなの」
ひとつ息を吐き、シャルは言葉を継いだ。
「なぁ、ルイス。お前がもし俺の立場だったとして、いつか誰かと…どっかの国の姫と結婚しなきゃならなくなったら、すんなり首を縦に振れるか?」
「振れますよ」
「その相手が、好きでも何でもない女だとしても?」
「……ええ。次期国王はいずれ国の行く末を背負う立場にあります。国の繁栄のため結婚します」
「ルイスらしい答えだな」
シャルは寂しげにつぶやく。
「分かるよ、お前の言う通りだ。俺はいつか親が決めた相手と結婚しなきゃならないし、今まではそんな将来が当たり前と思って疑問にも感じなかった。……でも、それって正しいのか?あいなや龍河と一緒にいたらだんだん分からなくなった」