誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「……一時の気の迷いですよ」
普段通り冷静でありつつ、シャルに対し思いやりをもってルイスは言った。
「あいな様と龍河様の使ったまじないの効果がいつまでもつかは分かりませんが、永遠に続くものではありません。あいな様が言っていたとおり、彼女達姉弟にとってここは言葉通り『夢の世界』なのです。まじないの効力が消えれば、お二人は自分達のいた世界に戻り私達のことを忘れるでしょう。そして、シャル様と私も彼女達のことを忘れます。目覚めた時には今こうしていることも断片的な記憶としてしか残らず、いずれその欠片すら無くなります」
「そんな……!!」
別れたくない。その一心で、シャルは訪問者二人の寝顔を見つめた。
城の様子がおかしくなってしまったのがあいな達のせいだというのなら、彼女達がこの世界から消える時、全てが元通りになるということ。
このままではいけない。分かっていても、シャルはこの言葉を我慢できなかった。
「……俺、あいなや龍河ともっと遊びたい」
「ええ、思う存分遊びましょう。まだまだ夢の時間は続くと思われますから」
ルイスの言う通り、誰の気配もないおかしな空間の中で四人の時間は続いていた。日数的なもので言えば一週間ほど続く、夢にしては長過ぎる時間だった。
あいな、龍河、シャル、ルイス。それ以外の存在がない世界では何をしても咎(とが)められないので、三人の世話係をしつつルイスも楽しんでいた。
あいな達が訪れて3日が過ぎた頃、シャルが誤って食卓に酒を出してしまった。