誤り婚−こんなはずじゃなかった!−
「また、男にフラれたの?」
「ゲームばっかしてるクセに、鋭い奴め」
「察しが良くて頭の切れるかっこいい男、と、言ってほしいな」
「私と秋葉の会話いつも聞いてるから、でしょ?っていうか、クラスの女子にそういうこと言うなよー」
「言うかよ。うっかり者の姉ちゃんじゃあるまいし。俺はちゃんと、学校では爽やかイケメンキャラの皮被ってるから」
「はいはい。猫の皮被ってるみたいなノリで言わないのー」
「猫の皮って、女が被るもんだろ?男の俺には不要だ」
「演技派中学生とでも言いたいの?すごいねー」
「棒だな、声音。誉めるんならもっと心込めろよな」
こんな、どうでもいい会話で場をつなげるのは姉弟の特性なのであろうか。昔はそんなこともなかったはずだが、いつの頃からか、二人の会話の大半はこんな感じである。
あいなと龍河は、同じソーシャルゲームで遊びながら、こうして冗談を言い合うのが常になっている。
「龍河、友達は大切にするんだぞ。と、姉らしいことを言ってみる今日この頃」
「うん、たしかに姉らしいな、珍しく。
つか、なるほどね。失恋直後ってことで今朝は沈んだ気分だったけど、学校で秋葉さんに励まされて気分上昇させて現在に至る、ってワケか」
「鋭いね、君は」
わざとおどけた口調で、あいなは言った。