彼女はミルクティーが好き。
この人と出会ったのは2か月前の、大学を卒業する前。
両親の勤める会社へ内定が決まっていた私は、
残りの大学生活を楽しんでいた。
そんなある日、ドレスコードのあるホテルで、家族三人でディナーを食べていた。
こんなことめったにある訳じゃないが、私の就職祝いだろうか。
そしてデザートを待っている時、父が真剣な顔をするから、こちらも改まって言葉を待った。
「愛するわが娘よ。お前に言っておかないといけないことがある。
父さんたちは、海外へ転勤になったんだ。」
何をかしこまって言うのかと思えばそんなことか。
私はもうすぐ社会人だし、今の家があるなら一人暮らしをはじめるだけだ。
「それでだな、
お前の内定は取り消させた。」
驚きすぎて、この静かなレストランでよく響くフォークの音を鳴らしてしまった。
「お前、マナーがなってないぞ。」
いやいや、あなたは親としてどうなのか。
「奏多が怒るのもわかるわ。私たちが勝手にしたんですもの。
でも新しい仕事先はちゃんと見つけたんだから。」
母は私が怒っているのは理解してくれたようだが、でもなんで内定取り消すかなぁ。
「いっつも勝手なんだから。一言言ってくれたっていいじゃない。」
「お前があの家で一人で住むのはさみしいだろ?
光熱費も安くないしな。だから、お前は住み込みの仕事を用意したんだ。
心配するな。雇い主は父さんの親友でな。お前の生まれる前からよく呑みにも行ってたんだ。お前の幼いころ何度かあったことあるんだが覚えてないか?」