彼女はミルクティーが好き。
そんなある日、
夕方に事務所に戻ると、一条が立っていた。
私を見るなり愛想のいい笑顔を向けてきた。
「何かご用ですか?」
人気者連中とはあれから接点はないが、
生徒やカズちゃんの話にはさんざん登場してくるので、顔と名前はすっかり覚えた。
「いやぁ、すいません。ICカードを部屋に置いてきちゃって。入れないですよ。」
オートロックの部屋なので、生徒にはたまに言われる。
「じゃあ、一緒に行きましょうか。」
私はマスターキーを腰にチェーンでつないでいて、そのカードで部屋の鍵を開けてあげている。
一条の部屋は一番上の階の一番端。
その間、無言で歩いていく。
たまにすれ違う生徒全員に一条は挨拶されていて、
寮でこんな感じだと、学園じゃ、
そりゃすごい数の人に挨拶されるんだろうな。
「じゃ、お願いします。」
部屋の扉の前で壁にもたれかかり、私が扉を開けるのを待ってる。
「はい、開きましたよ。」
ただカードをかざすだけ。
扉はすぐに開いた。
その瞬間、手を引っ張られ、部屋に引き込まれた。