彼女はミルクティーが好き。
「最後は、学園一の人気者、一条先輩ですね。
彼は名前の通り、この学園の学園長の息子です。
その名と、見た目の華やかさ、それに頭もよくて、スポーツもできる。
それなのに気さくで、
みんなに笑いかけていて、
ほんとに完璧な人ですよ。女子の人気もすごいですけど、男友達も多くてみんなに慕われる、彼こそ学園の王子様ですね。」
「贔屓がすごいわよ。あなたも一条さんのファンなのね。」
彼だけ褒めちぎられるように言われても、相澤君が、彼のファンであることしかわからない。
「社会教養学部と言っても、
人気なのは一部だけで、僕みたいな普通の考えを持つ人もいるんですよ。」
そういうと彼は頭をかいて、少し困ったように笑う。
そうだ、彼だって社会教養学部に入れた超エリートなのに、
人気者の前では彼はかすんでしまう。
せっかくの青春が誰かの陰に隠れてしまうなんて。そんなもったいない。
「もったいないね。相澤君だって十分カッコいいのに。」
窓口に頬杖をつきながらにっこりとほほ笑むと、
彼は照れて、視線を泳がせる。
「・・・管理人さんって、無表情で笑ってくれないんだと思っていました。」
「そんなことないですよ。私は感情が表情に出るタイプの人間です。
ですが、あまり、男子寮の生徒には笑いかけませんかね。」
「それはどうしてですか?」
聞いていいものかと、とまどいながら質問する。
ここは言ってしまっていいものだろうか。
私が人気者が嫌いなこと。
生徒にまで嫌いな人の話をするのはよくないな。
「まぁ、笑う理由もないですし、そもそもあんまり話しませんからね。」
彼は納得したのは、そういえばそうですね。と言葉を返してくれた。
「じゃあ、僕は部屋に戻ります。」
少し引き留めてしまった。
彼の背中を見て、少しだけ申し訳なくなった。
時計を見ると時刻はもう六時で夕食の支度をしようと自分の部屋に戻る。