彼女はミルクティーが好き。
「すいませーん。」
事務所から声が聞こえる。
慌てて手を洗い、事務所に向かうと、そこには、一条が立っていた。
・・・今日はいろんな人気者に会う日だ。
「何かご用ですか?」
窓口の前に立つ一条はニコニコと笑顔を浮かべながら後ろに手を組んでまっすぐ立っている。
彼の笑顔は本物ではない。
そんなの前々から気付いていた。
でもそれを彼に言うつもりもないし、彼がそれでいいなら、別に何とも思わない。
「大した用事じゃないんだけどさ、いいにおいするね。今日の献立は?」
ほんとに大した用事じゃない。
人の晩御飯の献立を聞いたところでどうするつもりだ。
「さぁ、別に教えませんが。」
「なにそれ。冷たくない?」
「あなたに優しくした覚えはありませんが。」
「相澤には笑顔で話すのに?」
どうやらさっきの話を聞いていたようだ。
相澤君には笑いかけるさ。楽しく話していたからね。
「楽しいことがあれば私だって笑いますよ。」
「笑ってくれたことないじゃん。」