本当の君を好きになる
プロローグ
「──あ、大丈夫?怪我はない?」
ぶつかった拍子に、そう気遣いの言葉をかける一人の男子生徒。
その生徒は、ぶつかった女子生徒の手をそっと握り、心配そうに顔を覗き込む。
「あ、は、はい!!大丈夫ですっ!!」
「そうか、それなら良かった!」
そう言ってとびきりの笑顔を見せる。女子生徒のハートが射ぬかれる音が響き渡る。
まわりの生徒は、その様子をポーッと頬を赤らませて見つめている。
何……何なのよ、この光景。
すっごくイライラするんだけど……。
その子に笑顔で手を振ると、その男子生徒はこちらに気づき歩いてくる。
や、やばい……逃げないと……!!
そう思って、後ろを向いたその瞬間
──ガシッ!!
振り返れば、超絶笑顔の男子生徒が私の手首を掴んでいた。
その光景に、まわりの生徒たちは悲鳴をあげる。
「瀬戸(セト)さん、ちょっと良いかな?」
「え?ちょっ……!」
そう言って微笑んだ彼は、そのまま私の腕を引っ張り歩き出す。
まわりからは、さらに悲鳴があがる。
スラッとした体に、綺麗な黒髪。そして、抜群に整った顔立ち。
そりゃ、悲鳴があがるのも分かるよ?分かるんだけどさ……
そんな事を考えていると、グイッと腕を引っ張られ、私は彼の背中にくっついた。
すると、彼はボソッと呟く。
「あんな目で見てんじゃねーよ。俺の好感度下げるつもりか?」
凍りつく体。止まる思考。
そして、離れる体。ただ、腕は掴まれたままで、どんどん引っ張られていく。
ああ……だから嫌なのよ……。
コイツと一緒にいるのは……。
コイツ……幸坂直登(コウサカナオト)と一緒にいるのは!!!!
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