本当の君を好きになる
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「──すげぇ。数学で90点も取ってる。」
「自分でもビックリしてる。奇跡だと思うよ。」
返されたテストを見ながら、私と直登は並んで話をする。寒いからと言って、直登は家に入れてくれた。
「奇跡じゃなくて、これが努力の証だろ?」
そう言われて、私は嬉しくて笑う。
直登は、よしよしと私の頭を撫でてから、はぁとため息をついた。
「俺さ、今回の事で不安になったんだよな。」
「え?私がちゃんと進学出来るかどうか?」
「違うわ!……高校卒業したらさ、それぞれの道に進むだろ?今まで、当たり前のように可鈴とずっと一緒にいてさ、離れる事なんて考えてもみなかった。……そんな状況に、俺は堪えられるのかな?ってな。」
「直登……。」
「かといって、同じ大学に行くなんて夢みたいなこと言ってられないしな。でも、当たり前に側にいた人と離れ離れになるって、怖いよな。そうやって、どんどん大人に近づいていくんだ。」
直登の言葉は、私にも重くのしかかる。
そんな現実が待っているなんて、考えたくなかった。
でも、それが時間の流れなんだよね。
抗えないものなんだよね。