本当の君を好きになる


***





「──すげぇ。数学で90点も取ってる。」



「自分でもビックリしてる。奇跡だと思うよ。」




返されたテストを見ながら、私と直登は並んで話をする。寒いからと言って、直登は家に入れてくれた。




「奇跡じゃなくて、これが努力の証だろ?」




そう言われて、私は嬉しくて笑う。

直登は、よしよしと私の頭を撫でてから、はぁとため息をついた。




「俺さ、今回の事で不安になったんだよな。」



「え?私がちゃんと進学出来るかどうか?」



「違うわ!……高校卒業したらさ、それぞれの道に進むだろ?今まで、当たり前のように可鈴とずっと一緒にいてさ、離れる事なんて考えてもみなかった。……そんな状況に、俺は堪えられるのかな?ってな。」



「直登……。」



「かといって、同じ大学に行くなんて夢みたいなこと言ってられないしな。でも、当たり前に側にいた人と離れ離れになるって、怖いよな。そうやって、どんどん大人に近づいていくんだ。」



直登の言葉は、私にも重くのしかかる。


そんな現実が待っているなんて、考えたくなかった。


でも、それが時間の流れなんだよね。


抗えないものなんだよね。




< 163 / 308 >

この作品をシェア

pagetop