本当の君を好きになる
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「──はぁ、疲れた。可鈴(カリン)、何か飲み物無い?」
「……無いよ。」
「はぁ?飲み物も持ってねぇの?」
「私は直登のマネージャーじゃないんだから、いちいち持ってる訳無いでしょ?」
「……チッ。」
今、舌打ちをした彼が、先程キャーキャー騒がれていた幸坂直登なのです。同一人物なのです。信じられないのです。
直登は、私の幼馴染みで、とても仲は良いんですよ。
それは認めます。
ええ、ええ、認めますとも。
しかし、彼はかなりの良い子キャラなんですよね。演じてるんですよね。爽やかな王子キャラを。
何故かって?
騙される女の子を見るのが楽しいから。
いやいや、腐りすぎてませんか?そんな人が、あんなにキャーキャー騒がれて良いものなんですか?
私は認めませんよ?絶対にね。
だって、本当の彼の姿は私の目の前に……。
その時、私は顎をクイッと持ち上げられた。
綺麗な瞳に見下ろされ、思わず心臓が高鳴る。
「何か変な事を考えているね?……全く悪い子だ。」
再び、王子モードに切り替わる直登。正直、この王子モードは、実際にされるとかなりキュンとしてしまう。そんな私を見て
「何ドキドキしちゃってんの?笑えるな。」
と、黒い笑みを浮かべる。
そして、顎から手を離すと何事も無かったかのように歩き出す。