本当の君を好きになる
「──樋野って……。」
突然、桐谷くんの後ろの席の幸坂くんが声を出す。
ちょうど考えていた人物の事を話し始めるので、私は驚き固まる。
「何者なの?」
「何者ってどういう事?」
「瀬戸さんが、すごく興味持ってるから、何者なのかなー?って気になったんだよねー。」
「へー。それは彼氏として心配だよねー。」
「……桐谷。屋上行こうか。」
「ん?お断り。」
そんな二人のやり取りを面白いと感じながらも、私の胸は激しく音をたてる。
とにかく、今はこの状況を堪え抜くしかない。
可鈴には、いずれ話すことにして、今は私の中で留めておこう。
大丈夫。
大丈夫だから。
そう自分に言い聞かせながらも、どんどん大きくなる心臓の音に、気持ち悪さが増していった──。