本当の君を好きになる
まさかの言葉に、私は目をパチクリさせる。
「朝からずっとボーッとしてるし、体調悪いんじゃないかな?って思ってね。」
「そうだったの?俺、全然気づかなかったよ。」
「それは、幸坂くんが瀬戸さんの事しか見てないからだよ。」
「……ちょっと何を言ってるか分からないなー。」
「本当に素直じゃないよね。」
「さて、プリントの見直しでもするかなー。」
「……まったく。……で、井上さんは保健室行く?着いていこうか?」
「えっ!?い、いや、大丈夫だよ!!」
だって体調悪い訳じゃ無いし。
ただ樋野綾人の事が気になってるだけで……なんて言えない。
「遠慮しなくて良いから。ほら行こう。」
そう言って、桐谷くんは立ち上がると私の手を引く。
その勢いで、私も自然と立ち上がってしまう。
その瞬間に、教室から悲鳴が上がる。
皆の視線が突き刺さり、恥ずかしくなってしまい、私は桐谷くんの背中を押して、廊下まで出た。
少し歩いてから、ようやく安心する。