本当の君を好きになる
そう言いながら、目から涙が溢れてくるのが分かった。
ああ、ダメだ。
今の私は、本当に面倒くさい。
こんな事で、泣き出して桐谷くんもどうして良いか分からないだろう。
と思っていた時、目の前にハンカチがすっと差し出された。
「場所変えよ。ほら、着いておいで。」
そう言って、優しく私の手を引く。
その優しさは、反則だよ……。
やめて。
期待しちゃうから。
誰にでも優しくなんてしないで。
可鈴の事が好きなら、可鈴にだけ優しくしていれば良い。
そう思いながらも、繋がれた左手を離すことが出来ないのは、私が弱虫だからだ。
お願いだから、今だけでも私を見て。
今だけ良いから……手を離さないで──。