本当の君を好きになる

***



授業が終わり、プリントを前に提出しようとすると、樋野くんが一緒に持っていってくれた。


「ありがとう。」と言って、そのまま席に座り凪沙の事を思い出す。




そういえば、湊くんと出て行ったけど、どこに行ったんだろう?


二人とも帰ってきてないし……。



でも……二人で抜け出すって事は、何か面白いことに成りそうかも……!!





そんな事を思っていると、頭に衝撃が走る。

とっさに頭を押さえると、ニッコリと笑った直登が目の前に立っていた。





「瀬戸さーん。一緒にお昼食べよ~?」




え……。

何その笑顔。

怖いんですけど。



絶対に、何か怒ってるでしょ!?


い、嫌だっ……。

このまま二人になったら、何言われるか分からないぞ……!?

ど、どうすれば──



そんな事を考えている時、樋野くんが、自分の席に戻ってきた。




「──あ、樋野くん!プリントありがとうね!」




「あ、気にしなくて良いよ。ついでだったし。」



「あ、あと、良かったら一緒にお昼食べない?」





「「え?」」





直登と、樋野くんの声が見事に重なる。

そして、樋野くんは気まずそうに笑うと、答える。




「いやいや、流石にその二人の間に入る勇気はないよー。彼氏がいるんだから、二人で食べなよ。」



「え!?え、遠慮しなくても──」



「──樋野くん。気遣ってくれてありがとう。じゃあお言葉に甘えて二人で食べさせてもらうね。ほら、瀬戸さん行くよ。」





そう言って、私のお弁当袋を持つと、もう片方の手で私の腕をグイグイ引っ張る。





ああああ……!!


私の安息の地がああああ……!!



覚悟を決めて、教室を後にした。



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