本当の君を好きになる
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「──なあ、どれだけ俺の事妬かせたい訳?わざとやってんのか?」
いつもの空き教室に入った瞬間、私は扉に押さえつけられてしまった。
お弁当が、ゴトッと音を立てて下に落ちるが、それを拾う暇も勇気もない。
目の前に、腕を組んで立つ直登の威圧感がすごい。
「いっ……いやっ……別にわざとやってる訳では……。」
「へぇ?無自覚なんだなぁ?昨日から、何かあれば樋野くん、樋野くんって……お前樋野の事が好きなのかよ?」
「す、好きとか、そんなんじゃ……。」
「じゃあ、お前が好きなのは誰なんだよ?」
「……へっ……!?」
「言えよ。誰が好きか。ハッキリ言え。」
「そっ、それは少し無理が──」
ドンッ!と、大きな音が響く。
顔の横にある直登の大きな手。
こ、これが世に言う壁ドンってヤツですか……?
でも、こんな怖い壁ドンなら私いらないですっ!!!
「何が無理なの?」
「む、無理じゃないですっ……。」
「じゃあ言えるよね?瀬戸さんは良い子だから。」
壁ドンしてから、急に王子モードになる直登。
それが逆に私の恐怖心を煽る。