本当の君を好きになる
「こ、怖いよ……。」
「怖くなんてないよ?口にしてしまえば、何も怖いことなんて無いんだから……ね?」
そう言って、私の顎を持ち上げる。
王子モードの、優しい顔が、本当に怖い。
でもドキッとしてしまう自分もいるのだ。
そらせない視線。
ドキドキと高鳴る心臓。
そして、少しの恐怖。
その訳の分からない状態で、私は直登のネクタイを掴み、グッと引き寄せた。
「……私が、好きなのはっ……直登だけだからっ……。」
私が、必死にそう言うと、直登は微かに頬を赤く染める。
そして、ネクタイを掴む私の手を大きな手が包み込む。
「……もう一回言って……?」
「好きなのっ……直登だけだからっ……。」
「……もっと。」
「……好き。直登。」
「まだ足りない。」
「……好きっ。」
「……俺も……好き。」
掠れた声が、伝わる温もりが、おさまらない鼓動が、私の頭を狂わせる。
何か……何も考えられない。
さっきまで、あれほど怖かったのに、今は離れるのが寂しい。
離さないでいてほしい。
そのまま、優しく唇が落とされる。