本当の君を好きになる
「──良いの。」
「……え?」
「私は、好きでいるだけで……良いんだよ。」
これ以上何も言うなとでも言っているかのような、そんな重い空気に私は言葉を発する事が出来なかった。
凪沙は、最近とても明るくなった。
それは事実だ。
でも、それと同時に分からないことが増えた。
席替えをしてから、凪沙と距離が離れてしまったような気がしてならない。
物理的にも、心理的にもだ。
「──おはよー。」
そこへ聞こえる、優しい声。
凪沙は、パッと表情を変えると元気に答える。
「おはよー桐谷くん!」
「あれ?幸坂くんはどこに行ったの?」
「幸坂くんなら先生に呼ばれて、職員室に行ってるみたいだよ!」
「そっかー。……あれ?瀬戸さん、何でそんなに暗いの?」
突然、私に話が向けられ慌てて答える。
「えっ!?く、暗くなんてないよー!!朝が弱いだけだから!あ、じゃあ私席に戻るね!」
私は席を立つと、逃げるようにその場を去る。