本当の君を好きになる




***




お昼休み。


今日は、皆とお弁当を食べる気にならなくて、一人屋上に来ていた。

何で、こんなモヤモヤしている時に限って、空はこんなにも青く澄み渡っているんだろう?

ここで、雨でも降ってくれれば、少しは悲しい気分に浸れるのに……。




おむすびに、かぶりつく。

うん。今日も美味しい。



と、その時屋上の扉がガチャリと開いた。






「──あ、瀬戸さんみっけ。」



「え、湊くん……?」



そこには、お弁当袋を下げた湊くんが立っていた。

てっきり、直登が追いかけてきてくれたと思っていた私。

その人物の登場に、驚きが隠せなかった。





「空き教室にいると思ってたから、ちょっと手こずったよ。もう少し、分かりやすい場所にいてよね。」



「え、何か……ごめんなさい。」



「ハハッ!嘘々。ここでご飯食べて良い?」



「あ、もちろん。」




湊くんは、ニコニコしてお弁当を開けると「いただきます。」と言ってご飯を食べ始めた。







「……何で?」






自然と出た言葉。

そこには色んな意味が含まれている。




何でここに来たの?


直登と凪沙は放っておいて良いの?


そこまでして探してくれたの?


何か言いたいことがあるの?






「……そんなの言わなくても分かるでしょ?瀬戸さんが心配だったからだよ。」




「……心配なんて……。」




「何か悩んでる顔してたから、相談に乗ってあげようかな~?ってね。」





「……私って、やっぱり分かりやすいのかな。」




そう言って笑い合う。

湊くんが来てくれた事で、少し気分が楽になった気がする。

何だかんだ、湊くんは優しくて、困っている時にはすっと手を差し伸べてくれる。


そんな頼りになる存在だ。






「──分かりやすいというか、分かってあげたいんだよ。」




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