本当の君を好きになる
「──瀬戸さんの事、好きだから心配なんだよ。」
湊くんの突然の発言に、私は何も言えずに彼の目をただただ見つめていた。
私の目が、それほど驚きを物語っていたのか、湊くんはフッと笑う。
「今、引いたでしょ?まだ好きでいたのかって。」
「そっ、そんなこと……。」
「まあ、仕方ないじゃん。好きなんだから。」
かなりあっさりと告げられ、私は目をぱちくりさせるばかりだ。
こんな私の事を、ずっと好きでいたって何の意味もないのに……?
私は、直登と付き合ってるのに……?
そもそも、私のどこに好きになる要素があるんだろうか?
頭の中が?マークで埋め尽くされる。
湊くんは、青く澄み渡った空をボーッと眺める。
「どうして瀬戸さんじゃないとダメなんだろう……?」
「……へ?」
「……諦めるならとっくの前に諦めてる筈だし、井上さんの事も好きになれれば好きになってる。……でも、瀬戸さんが俺の事好きじゃないって知ってても、振り向いてくれることはないって分かってても……好きなんだよなぁ……。」
その言葉は、彼にとって独り言だったのかもしれない。
ただの呟きだったのかもしれない。
それでも、私の胸をひどく締め付けて、苦しめる。
「ごめんね。」なんて、偉そうな事は言えない。
かといって「ありがとう。」なんて優しい言葉もかけられない。
本当に、とうして私の事なんか……。
そんな事を考えていた時、頭をわしゃわしゃと撫でられた。
驚いて、彼の方を見るといつもの優しい笑顔。