本当の君を好きになる
「──好きだよ。」
私の言葉に、桐谷くんは少し驚いた顔をした。
私は、それに構わず続ける。
「もちろん好きだよ。だって、直登は私の兄弟のような存在だから。」
「……直登。……兄弟。」
あ、直登って言っちゃった。
皆の前ではお互いに名字で呼ぶって決めてたのに。
……まあ、良いか。
「違うよ。俺が聞いたのはそんな事じゃない。」
そんな事を考えていると、再び桐谷くんが口を開いた。
私は、もう一度桐谷くんの方を見る。
「幸坂の事、一人の男として好きなの?」
「一人の……男……。」
その言葉に、私は何も言えず黙り込んでしまった。
直登の事、一人の男として好きとか、考えたこともなかった。
小さい頃から、ずっと一緒にいて、そんな感情よりも、本当に兄弟のような感覚でいたから……。
「俺はね?好きになって欲しい。瀬戸さんに。俺の事を、一人の男として。だから、瀬戸さんに勇気を出して告白したし、俺の事を知ってもらおうとして、こうやって一緒に帰ってる。友達としての、好きなんて気持ちはいらない。それくらい、本気だから。」
桐谷くんは、私の目を見て真っ直ぐそう伝えてくれた。
その言葉が、真剣な目が、震える手が、私の心を強く揺さぶった。
「……ごめん、熱くなりすぎた……。」
桐谷くんは、そう言って再び歩き始めた。
私も、歩き出すと、彼の腕を掴んだ。
驚いて振り返る桐谷くん。そのまま私は告げる。