本当の君を好きになる





お茶を飲み干したところで、幸坂くんはそう告げる。





「もっと可鈴の事頼れよ。アイツは……井上の事本当に大切に思ってるから。」




そう言って、頭をポンポンと撫でてきた。

その言葉と優しさに、私の目から涙がブワッと溢れる。





「飲み物買ってくるわ。」





そう言って、幸坂くんは教室を出ていった。

一人になった教室で、私は涙を流し続けた。

多くは語らない幸坂くんだけど、節々に優しさを感じる。




それと同時に、私が可鈴にしていた行動を思い返す。

大切な人に、頼ってもらえないって……思ったよりも残酷なのかもしれない。

迷惑をかけちゃいけないと思いながら、可鈴を苦しめていたのかもしれない。





話してみよう。

可鈴に。


大切だから。


大切な人だからこそ、頼ってみよう。





そう覚悟をして、涙を拭った瞬間、教室のドアがガラララと開いた。



思っていたよりも、帰ってくるのが早かったな。








そう思って顔を上げた瞬間、私は固まった。




< 220 / 308 >

この作品をシェア

pagetop