本当の君を好きになる





「──こんにちはー!」



「あ、綾人くん、いらっしゃい!」



家庭教師の綾人くんが、通ってくるようになって半年が過ぎていた。

一学期の成績も、二学期の成績も、今までとは比べ物にならないほどになった。

菜月も、志望校の選択肢が広がり、皆彼に感謝していた。




そして、それと同時に、菜月の綾人くんに対する恋心も明確になってきた。

最初は、かっこいいからという理由だけで、気にしていたと思っていたのだが、そうではなかった。

一緒に、勉強を進める内に、彼の中身も含めて、菜月は好きになっていたのだ。





「綾人くん、ごめんね。今日、菜月風邪引いちゃったみたいで……勉強できる状態じゃないの。」



「あ、そうだったの?それなら連絡くれればお見舞いの一つでも持ってきたのに。」



「あの子強がりだからね。ギリギリまで頑張るって言ってたけど、綾人くんにうつしてもいけないからって諦めたんだ……。ごめんね?」



「凪沙ちゃんが謝ることないよ。それに、受験に向けて大事な時期だしね。じゃあ、軽く挨拶してくるよ。」



「うん。ありがとう。菜月も喜ぶと思う。」






そう言って彼の背中を見送った後、深くため息をつく。



綾人くんが、同級生だってことを知ってから、私たちはあっという間に仲良くなった。

連絡先も交換したし、休日に菜月も一緒に遊びに行く事だってあった。

でも、距離が近づけば近づくほど、私は自分の気持ちに嘘がつけなくなっていった。




私……綾人くんのことが……好きだ。




菜月が好きだって言ったから、応援してあげなきゃいけない。

彼女ともそう約束をした。




でも、日に日に大きくなるこの想いは、もう止めることなんて出来なかった。




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