本当の君を好きになる





***





「飲み物買ってくるわ。」




そう言って、幸坂くんは空き教室を後にした。


私は、一人で涙を流し続けていた。





と、その時教室の扉が開く。

思っていたよりも帰ってくるのが早かったなと思い顔をあげると、そこには、綾人くんが立っていた。




私は、目を大きく見開いて何も言えなかった。




綾人くんは、真剣な表情でこちらを見つめてくる。






「……凪沙。」





そう呼ばれた瞬間、心臓が激しく音を立てた。

こちらに近づいて来ようとする彼に対して、


ガシャン!!


と側にある机を押し倒した。驚いた彼の動きは止まる。





「凪──」




「──来ないでっ!!」





私は、大きな声で叫ぶ。

彼は、悲しそうな表情を浮かべるが、首を横に振る。





「……凪沙、お願いだから話を──」






ガシャン!!!!




と、今度はお弁当の置いてある机を押し倒した。

無残にお弁当の中身が床に散らばっていく。






「──もう私に近づかないで!!私になんて関わらないでよ!!」



「そんなの無理だよ……。僕は、ずっと──」



「もう何も聞きたくない!!私たちのことは、綾人くんには関係ないんだから口出ししないでっ!!」



「関係ない訳ないだろ!?」



「関係ないよっ!!」






私はそう言って制服の袖で、うっすらと浮かんだ涙を拭う。






「関係ないから……もう忘れてよ……。お願いっ……。」





私がそう呟くと、彼は肩を落とす。






「……また来るよ。」





そう言って、教室を出ていった。

私は、ハッとして廊下に出るが、もう綾人くんの姿は無かった。



フラフラとした足取りで、廊下を歩き、トイレに入る。









違う……。




もっと彼を楽にさせてあげられる言葉かけがあった筈だ。


結局、私には彼を傷つけることしか出来ない。




彼が私の前に現れれば傷つくことしかない。



だからこそ、近づいてほしくない。



関係をもってほしくない。



でも、うまく表現できない。



情けない。



……本当に、情けないっ……。









「うわああああああっ!!!!」







私の悲痛な叫び声は、トイレの中に響き渡った。









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