本当の君を好きになる
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「──ごめん、ちょっとお手洗い借りてもいいかな?」
「あ、良いよ!部屋を出て右に行けばすぐだから!」
「うん!ありがとう。」
私が部屋を出た瞬間、凪沙の妹がちょうど階段を上がってくるところだった。
私は、ニコッと微笑みかけると彼女に近づく。
彼女は、戸惑いながらも逃げようとはしなかった。
「……菜月ちゃん……で合ってるよね?」
「あ、はい。」
「お母さんもお姉ちゃんも、いい人だね!私、これからも通ってきていいかな?」
「あー……母も姉も喜ぶと思います。是非。」
菜月ちゃんはそう言うと、凪沙に負けないくらいの優しい笑顔を浮かべた。
なんだ、そんな素敵な顔出来るんだね。
「ありがとう!あ、トイレってどこにあるっけ?」
「あ、そこを真っ直ぐ行けばありますよ。」
「了解!ありがとう!」
そう言って、振り返った瞬間、小さな声で彼女は言った。
「──姉は……私の事、何か言ってましたか?」