本当の君を好きになる
***
──ピンポーン。
「はーい!今行きまーす!」
母親の元気な声が聞こえる。ガチャリと、玄関の扉を開ける音。
「あら、直くん!!何?可鈴が忘れ物でもしちゃった?」
「おばさん、お久しぶりです。そんな事無いですよ!ちょっと用事があって来ただけですから。」
二人の会話が聞こえ、私は自分の部屋の扉を静かに開けた。
自分の部屋の、前の廊下を真っ直ぐ進めば、すぐに玄関なので、話している二人とすぐに目があった。
「あ、可鈴。直くん入れてあげなさい!」
「あー、うん。分かったー。」
直登は、母にペコペコとお辞儀をすると、私の部屋に入る。
私の、部屋に入ってしまえばいつもの直登に戻る。
「帰ってくるの遅かったんだな。」
直登はそう言いながら、私の方をチラチラと見る。
「そりゃあ、色々と話しながら帰ってたからね!」
「ふーん……。で?桐谷とは、どうなったんだ?」
「あ、付き合うことにしたよ!」
「…………は?」
「悪い人じゃ無さそうだし、真剣な気持ちも伝わってきたから、とりあえず付き合うことから始めようと思ったの。」
直登は、私の言葉に驚きと苛立ちを隠せていない様子だった。
「とりあえずって何だよ。よく分かんねぇヤツと、そんな簡単に付き合って良いのかよ。」
「簡単な気持ちじゃないよ。ちゃんと考えて──」
「──簡単な気持ちだろ。じゃあ、お前は、もし俺に告白されたらどうするんだよ?」
「………え?」