本当の君を好きになる

花火大会





***




賑やかな音楽、立ち並ぶ屋台。

そして、溢れかえる人たち。

たくさんの食べ物の香りにつられながら、私たちは歩く。



あっという間に花火大会当日になり、隣には私の彼氏である直登の姿。

黒色の浴衣を着た彼は、いつもより大人びて見える。




「……瀬戸さん、どうしたの?」




あ、大人びて見えるのは王子モードだからか。

どうしても、こういう大きなイベントには学生が集まってくるもの。

直登も、いつ誰に見られているか分からない状況で気が抜けないのだろう。





「僕の顔に何かついてる?」




優しくそう問いかけながらも、頭をグイッと掴んで前を向かされる。

痛い、痛い!痛いってば!!




直登は軽く微笑みを浮かべたまま、歩いていく。

その行動は正解だったようだ。



まわりからは、「幸坂くんだ……!!」「浴衣姿も格好いい……!!」という声がたくさん聞こえていた。

さすがは直登さま。

恐るべし……。





それから、屋台で買い物をしている時に、私たちは声をかけられた。




「──あ、可鈴!」



その声に振り返ると、凪沙と妹の菜月ちゃんがいた。



「良かったー!!私、心配してたんだからね?」


「へ?何を?」


「可鈴の事だから、皆で花火大会行こうとか言い出して、幸坂くんを困らせてたんじゃないかと思ってたけど、良かった!二人でちゃんと約束したんだね!」




その言葉に私は苦笑い。直登は噴き出した。

その私たちの様子に、凪沙も気まずそうな顔をする。

「やっぱりか……。」といった表情をしていた。




「……あれ?菜月ちゃんは、そういえば彼氏いるんじゃなかったっけ?」



「あ、そうですよ!この後待ち合わせしてるので、それまで姉と一緒に回ってたんです!」



「え?ということは、その後は凪沙一人になるの?」



「いや、私も待ち合わせしてるから!」



「そうなのっ!?」





私が驚くと、菜月ちゃんはニヤニヤしながら答える。




「そうなんですよー!あの人と回るらしいですよ!」



「あの人……って──」



「──じゃ、じゃあ、そういうことだから!た、楽しんできてねー!!」




そう言って二人は去っていった。






……てか、あの人っていったらあの人だよね……?





< 250 / 308 >

この作品をシェア

pagetop