本当の君を好きになる
花火大会
***
賑やかな音楽、立ち並ぶ屋台。
そして、溢れかえる人たち。
たくさんの食べ物の香りにつられながら、私たちは歩く。
あっという間に花火大会当日になり、隣には私の彼氏である直登の姿。
黒色の浴衣を着た彼は、いつもより大人びて見える。
「……瀬戸さん、どうしたの?」
あ、大人びて見えるのは王子モードだからか。
どうしても、こういう大きなイベントには学生が集まってくるもの。
直登も、いつ誰に見られているか分からない状況で気が抜けないのだろう。
「僕の顔に何かついてる?」
優しくそう問いかけながらも、頭をグイッと掴んで前を向かされる。
痛い、痛い!痛いってば!!
直登は軽く微笑みを浮かべたまま、歩いていく。
その行動は正解だったようだ。
まわりからは、「幸坂くんだ……!!」「浴衣姿も格好いい……!!」という声がたくさん聞こえていた。
さすがは直登さま。
恐るべし……。
それから、屋台で買い物をしている時に、私たちは声をかけられた。
「──あ、可鈴!」
その声に振り返ると、凪沙と妹の菜月ちゃんがいた。
「良かったー!!私、心配してたんだからね?」
「へ?何を?」
「可鈴の事だから、皆で花火大会行こうとか言い出して、幸坂くんを困らせてたんじゃないかと思ってたけど、良かった!二人でちゃんと約束したんだね!」
その言葉に私は苦笑い。直登は噴き出した。
その私たちの様子に、凪沙も気まずそうな顔をする。
「やっぱりか……。」といった表情をしていた。
「……あれ?菜月ちゃんは、そういえば彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「あ、そうですよ!この後待ち合わせしてるので、それまで姉と一緒に回ってたんです!」
「え?ということは、その後は凪沙一人になるの?」
「いや、私も待ち合わせしてるから!」
「そうなのっ!?」
私が驚くと、菜月ちゃんはニヤニヤしながら答える。
「そうなんですよー!あの人と回るらしいですよ!」
「あの人……って──」
「──じゃ、じゃあ、そういうことだから!た、楽しんできてねー!!」
そう言って二人は去っていった。
……てか、あの人っていったらあの人だよね……?