本当の君を好きになる
「──ごめん、瀬戸さん!遅くなっちゃった!」
すると息を切らした直登が帰ってきた。
「学校の女の子達に声かけられてさ……全然逃げられなくて……。」
「……ふーん……大変だったね。」
「……怒ってる……?」
「別に。」
「……分かった。」
直登はそう言うと、私の腕をガシッと握る。
驚いて直登の方を見ると、悪戯っぽく笑う。
「……じゃあ、二人きりになれる所……行こっか。」
「へっ……!?」
ドキッとする間もなく、腕を引っ張られ私たちは人混みを抜ける。
先ほどの賑やかさ、明るさはどんどん遠ざかっていく。
真っ暗な夜道を、カランコロン、カランコロンと下駄の弾む音が駆けていく。
私は息を切らしながらも、彼に必死についていった。
そして、石畳の階段を駆け上がるとようやく直登は足を止めた。
「はあっ……はあっ……はあっ……!!ここどこっ……!?」
ようやく絞り出した声。
直登も息を切らしながらも、すごく楽しそうに笑っていた。
「はあっ……二人っきりにっ……なれる所ってっ……言っただろっ……!?」