本当の君を好きになる
辺りを見回すと、鳥居が見えた。
神社まで来たのか……。
先ほどまで歩いていた屋台の明かりが遠くに見える。
オレンジ色の優しい明かりの中をたくさんの人が行き来しているのを私はボーッと眺めていた。
「──可鈴。」
名前を呼ばれて、我に返る。
直登は階段の上に座り、手招きをしていた。
私はそっと彼の隣に腰をかける。
熱く火照った体と対照的に、石畳の階段はひんやりと冷たかった。
「……これでも、俺毎日不安なんだよ。」
直登がぽつりと呟く。
彼は、真っ直ぐ前を向いたまま話を続ける。
「俺、いつも人によって態度変えてるだろ?……確かに、最初の内は楽しかったんだ。あんなの本当の俺の姿じゃないのに、皆キャーキャー言ってさ……。でも、可鈴と付き合い始めてから、本当にそれで良いのか?って思った。」
私も直登と同じように真っ直ぐに前を向いて、その声に耳を傾けた。
「……あんな事続けて、可鈴に愛想つかされるんじゃないかって、どれだけ思ったか分かんない。」
直登の言葉に、私も言葉を返す。
「……確かに、私もうんざりしてた時期はあったよ?皆にはあんなに優しいのに、どうして私にだけはすごく厳しいんだろう?って。そんなにコロコロ態度変えなくても良いのにって。……でもね、直登と付き合い始めてから考えが変わったの。だって、私はそんな意地悪な直登の事を知っていて、そんな直登の事を好きになったんだから。……何か皆より特別な感じがしない?」
そう言って、直登に笑顔を向ける。
「私は、皆の前でキラキラしている直登も、私の前で素直になれない直登も……全部含めて好きなんだから。だから、不安になんてならなくて良いの。直登はそれで良いんだよ。」
「……可鈴。」
直登がそう言って、私の肩をグイッと引き寄せたその瞬間──
ヒュゥゥゥ……………………ドォォンッ………!!!!
真っ暗な空に、一輪の花が咲き誇る。
下の屋台からも、歓声が上がった。
私は、直登の肩に寄りかかり、花火を見つめる。
本当に、幸せに満ち溢れた時間だった──。