本当の君を好きになる
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「──湊くーん。」
補習を終え、下駄箱で靴を履き替えている時、後ろで聞きなれた声がした。
「瀬戸さん?どうしたの?」
「いや、一緒に帰ろうと思ってね!」
「一緒に帰ろうって……。」
俺は、キョロキョロと辺りを見回す。
幸坂の姿はない。
「……幸坂はどうしたの?」
「直登なら、今日は久しぶりにお父さんが帰って来るからって、ダッシュで帰って行ったよ?」
「あー、そういえば単身赴任って言ってたね。」
「そうそう!だから今日は一緒に帰ろう?」
瀬戸さんはニコッと笑みを浮かべると、靴を取り出す。
「後で怒られても、俺責任とらないからね?」
「良いの良いの!それに、湊くんには聞きたいこともあるしね!」
靴を履き終えた彼女は、そう言って俺の隣に並ぶ。
「……聞きたいこと?」
「まあ、話しながら帰ろうよ!」
普段より変に明るい彼女の様子に違和感を感じなからも、俺はその誘いを断ることが出来なかった。
高鳴る鼓動を彼女に気づかれないようにするのに、必死だったからだ──。