本当の君を好きになる




***




「──湊くーん。」




補習を終え、下駄箱で靴を履き替えている時、後ろで聞きなれた声がした。




「瀬戸さん?どうしたの?」



「いや、一緒に帰ろうと思ってね!」



「一緒に帰ろうって……。」





俺は、キョロキョロと辺りを見回す。

幸坂の姿はない。





「……幸坂はどうしたの?」



「直登なら、今日は久しぶりにお父さんが帰って来るからって、ダッシュで帰って行ったよ?」



「あー、そういえば単身赴任って言ってたね。」



「そうそう!だから今日は一緒に帰ろう?」





瀬戸さんはニコッと笑みを浮かべると、靴を取り出す。




「後で怒られても、俺責任とらないからね?」



「良いの良いの!それに、湊くんには聞きたいこともあるしね!」




靴を履き終えた彼女は、そう言って俺の隣に並ぶ。







「……聞きたいこと?」






「まあ、話しながら帰ろうよ!」






普段より変に明るい彼女の様子に違和感を感じなからも、俺はその誘いを断ることが出来なかった。


高鳴る鼓動を彼女に気づかれないようにするのに、必死だったからだ──。



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