本当の君を好きになる
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「──あ、そういえばさ、湊くん花火大会行った?」
「……え?」
「今年の花火、すっごい綺麗だったよね!!」
「……あー、実は俺見に行って無いんだよね。用事があってさ。」
「……え?」
「……え?」
瀬戸さんは、俺に向けて困惑の表情を見せる。
その彼女の表情を見て、しまったと思った。
「あ、間違え──」
「──わざわざ嘘つくって事は……やっぱりあの人と何かあるんだね……?」
瀬戸さんの鋭い目つき。
俺は下唇を噛んで、プイッとそっぽを向いた。
あの人って……アイツの事だよな……?
まさか、一番見られたくない人に見られてたなんて……。
「……あの時の湊くんの表情が忘れられなくてね……ずっと気になってた。」
瀬戸さんの落ち着いた声。
聞きたかった事って……この事かよ……。
「一人で何か抱え込んでるんじゃない?」
見え透いたようなその言葉。
俺は、下を向いて抵抗し続ける。
「前にも言ったけど、私はどんなことがあっても湊くんの味方だから。だから、苦しいときには話してみて?話すだけでも、楽になることってたくさんあるし。」
ダメだ。
ちょっと一回黙ってくれないと、俺落ち着けないわ。
「私はね、湊くんの力に──」
そう言って、握ろうとしてきた手を俺はパシッと振り払った。
ようやく彼女の顔を見たが、大きく目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。
「……話すことなんてないから。」