本当の君を好きになる




***







「──あ、そういえばさ、湊くん花火大会行った?」



「……え?」



「今年の花火、すっごい綺麗だったよね!!」



「……あー、実は俺見に行って無いんだよね。用事があってさ。」



「……え?」



「……え?」





瀬戸さんは、俺に向けて困惑の表情を見せる。

その彼女の表情を見て、しまったと思った。






「あ、間違え──」






「──わざわざ嘘つくって事は……やっぱりあの人と何かあるんだね……?」






瀬戸さんの鋭い目つき。

俺は下唇を噛んで、プイッとそっぽを向いた。


あの人って……アイツの事だよな……?

まさか、一番見られたくない人に見られてたなんて……。







「……あの時の湊くんの表情が忘れられなくてね……ずっと気になってた。」







瀬戸さんの落ち着いた声。


聞きたかった事って……この事かよ……。







「一人で何か抱え込んでるんじゃない?」






見え透いたようなその言葉。

俺は、下を向いて抵抗し続ける。






「前にも言ったけど、私はどんなことがあっても湊くんの味方だから。だから、苦しいときには話してみて?話すだけでも、楽になることってたくさんあるし。」






ダメだ。



ちょっと一回黙ってくれないと、俺落ち着けないわ。






「私はね、湊くんの力に──」





そう言って、握ろうとしてきた手を俺はパシッと振り払った。


ようやく彼女の顔を見たが、大きく目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。





「……話すことなんてないから。」



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