本当の君を好きになる
『──もうこれ以上首を突っ込まないでくれ。』
彼はそう言い放ち、私の目の前から消えていった。
正直、湊くんからあんな事言われるとは思ってもみなかったから、ショックは大きかった。
でも、彼があそこまで乱れるのは、久しぶりに見た。
いつも余裕げな笑みを浮かべて、私より冷静に物事を見ていて……。
そんな彼が見せたあの姿は、相当追い込まれて出てきたものだろう。
何故そう思うのかって?
それは、彼が新学期早々学校を休んだからだ──。
***
「──やっぱりおかしい。」
私の言葉に、3人は一斉にこちらを見た。
いつもの空き教室で、昼御飯を食べていたところだったが、私の発言に3人は首をかしげる。
「急にどうしちゃったの……?」
「おかしいって……朝も言ってた桐谷くんのこと?」
「可鈴の気にしすぎだろ。」
凪沙、樋野くん、直登のそれぞれの話を聞きながらも私の頭の中はモヤモヤしたまま。
「……だっておかしいと思わない?今まで休んでるところ見たことない湊くんが新学期早々休むって。」
「普通に風邪でも引いたとしか思えないけど、何がそんなにおかしいんだよ?」
「……でも、可鈴の言いたいこともちょっと分かるかもしれないな……。」
「えっ?」
凪沙の言葉に、私はすぐさま反応する。
「桐谷くんから話聞いたことあるんだけど、皆勤賞狙って頑張ってたみたい。だから、どんなに高熱が出たとしても、とりあえず学校には行くって言ってたな……。」
「……なるほど。」
「……だったら、アイツが休むには、それなりの理由があるって事か?」
「……私は少なくともそう思うんだけど……。」
「私も可鈴の意見に賛成かな。」
「普段から桐谷くんのことよく見てる凪沙が言うんだから、僕もそれは信じてもいいと思うよ。」
「ちょ、綾人くんは余計なこと言わなくていいからっ!」
「アハハッ!」
そう言ってからかい気味に笑う樋野くん。
でも、確かに凪沙の言うことは信じるべき情報だと思うな。
そして、私と直登は今日配布されたプリントを届けるという理由で、桐谷くんの家を訪ねることにした。