本当の君を好きになる


***



目の前で、小さくなってしまった可鈴を見ながら、俺も、どうして良いのか分からずにいた。


ていうか、全部俺が悪いんだ。


一度付き合ってみるっていうのも、確かに一つの手だと思う。

そこから、好きになる事だってたくさんある。

それなのに、俺はそれを思いきり否定した。

可鈴は可鈴なりの考えで、桐谷の思いを尊重しようと、受け入れようとしてる。

頑張っている。



それなのに、俺は何だ?



一緒に帰れないだけで酷く嫉妬して、桐谷に告白されて可鈴を奪われると思い、付き合ったことを否定した。

結局は、俺を守るための……可鈴が遠くに行ってしまわない為の言葉を繰り返していたんだ。



俺だって、今まで可鈴に想いを伝える場面はたくさんあった筈だ。

それを避けてきたのは俺だ。

可鈴には、恋愛感情が無いことを知っていたから。


でも、それでは彼女の気持ちを変えることなんて、出来なかった。

俺は、結局ずっと逃げてたんだ。


そして、可鈴は俺の側から離れることなんて無い。そう勝手に確信していたんだ──。





< 26 / 308 >

この作品をシェア

pagetop