本当の君を好きになる

変わっていく






目の前の女性……いや、湊くんの母親と名乗る人の姿をまじまじと見つめる。


どう見ても、二十代前半にしか見えない。

とんでもない若作りをしてるとでも言うの?

いや、それはあり得ないだろう。


だとしたら、この人は……





「し、失礼ですけど……何歳ですか?」




「私?24歳。……あ、そうだよね!最近、湊くんのお父さんと結婚してね、だから本当のお母さんではないんだよ!」




その説明を聞いて、ようやく自分の中で納得がいった。

湊くんのお父さんの再婚相手だったのか。




ということは、花火大会の時あんなに嫌そうにしていたのも、まだお母さんのことを受け入れられていなかったからなのかな?




「……あの、湊くん今部屋で寝てるんですか?」




「へ?」




私の質問に、彼女は目を見開く。




「いや、まだ帰ってきてないけど……どうして?」


「え?帰ってきてない……?」


「ええ。まだ学校にいるはずだけど?」


「え?湊くん今日学校休んでるんじゃないですか?」


「へ?朝、いつも通り制服を着て出ていったんだけど……?」





全く噛み合わない話。

どういうこと……?


この戸惑っている様子から、この人が嘘をついているとは思えないし……じゃあ、湊くんは一体制服を着てどこに行っているんだろう?



隣にいる直登を見るが、特にこころあたりは無さそうだ。


私たちは、プリントを預けると家を後にした。

一応、「何かあれば連絡をください。」と、私の電話番号を渡しておいた。




……一体、湊くんは何がしたいのだろう?

もう少し、あの家には通う必要がありそうだ──。





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