本当の君を好きになる
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プルルルル……プルルルル……プルルルル──。
「……もしもし?」
『あ、もしもし?桐谷くん?』
電話の向こうから聞こえる、遠慮気味な優しい声。
いつもと変わらない彼女に、少し安心している自分がいた。
「あー、井上さん。今日はごめんね。急に休んだのに、連絡もしないで。」
俺は、なるべく悟られないようにと先に自分から休みについて触れる。
『ううん。大丈夫だけど……どうしたの?』
「あー……ちょっと風邪引いちゃってね。」
『……風邪?……それだけ?』
「うん。どうしたの?」
『……いや、皆勤賞狙ってた桐谷くんが、そんな簡単な理由で休むかな?って……。』
「アハハッ……。よく覚えてたね。そんな話。」
『……当たり前でしょ?だって……。』
「──ねえ、井上さん。」
彼女が次の言葉を言う前に、俺は彼女にとって残酷な言葉を告げる。
「会いたい。」
『…………え?』
どれだけ残酷だと分かっていても、今の俺には彼女に頼るしかなかった。
『どっ、どうしたのっ……?熱があるんじゃ──』
「──熱なんかないよ。」
そして、また彼女に期待させるような事を言ってしまう。
「井上さんしか頼れないんだ。お願い。」
『……う、うん。』
電話を切ってから、深くため息をつく。
俺って、本当に最低だな──。