本当の君を好きになる

***




プルルルル……プルルルル……プルルルル──。




「……もしもし?」



『あ、もしもし?桐谷くん?』




電話の向こうから聞こえる、遠慮気味な優しい声。

いつもと変わらない彼女に、少し安心している自分がいた。




「あー、井上さん。今日はごめんね。急に休んだのに、連絡もしないで。」




俺は、なるべく悟られないようにと先に自分から休みについて触れる。




『ううん。大丈夫だけど……どうしたの?』


「あー……ちょっと風邪引いちゃってね。」


『……風邪?……それだけ?』


「うん。どうしたの?」


『……いや、皆勤賞狙ってた桐谷くんが、そんな簡単な理由で休むかな?って……。』


「アハハッ……。よく覚えてたね。そんな話。」


『……当たり前でしょ?だって……。』




「──ねえ、井上さん。」





彼女が次の言葉を言う前に、俺は彼女にとって残酷な言葉を告げる。






「会いたい。」






『…………え?』






どれだけ残酷だと分かっていても、今の俺には彼女に頼るしかなかった。







『どっ、どうしたのっ……?熱があるんじゃ──』






「──熱なんかないよ。」







そして、また彼女に期待させるような事を言ってしまう。








「井上さんしか頼れないんだ。お願い。」






『……う、うん。』







電話を切ってから、深くため息をつく。



俺って、本当に最低だな──。





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