本当の君を好きになる
***
「──あ、幸坂おはよう。久しぶりだね。」
自分の席について、本を読んでいると、桐谷に話しかけられた。
女子たちは、もういなくなったのか。
桐谷は、椅子を引くと前の席に座る。
「……桐谷。」
「ん?」
「何かあったのか?」
その言葉に、桐谷は目を丸くした。
そして、ため息をつく。
「皆、そうやってすぐに知りたがるよね。知ったって良いことなんて1つもないのに。俺にとっても、君らにとってもね。」
それだけ言い残して、桐谷は席を立つ。
そして、教室を出ていってしまった。
俺は唖然としたまま、その後ろ姿を眺めるしかなかった。