本当の君を好きになる
ガラララ──。
その時、空き教室の扉が開く。
バッと入り口の方に目をやると、湊くんが立っていた。
彼は、真顔で私の方を見る。
「──何で、泣いてんの。」
前にも言われた言葉。
あの時は、直登に嘘をつかれて、公園で泣いているところを発見して、走って駆けつけてくれたんだっけ?
あの時の湊くんは、本当にヒーローみたいに見えたのに……今は違う。
呆れたような表情で、私に近づいてくる彼。
私は、すぐに立ち上がると、袖で涙を拭う。
そして、彼の事をキッと睨み付けた。
「……どうして、凪沙に手を出したのっ……!?」
私の言葉に、湊くんは立ち止まる。
そして、冷たい目で私の事を見下ろした。
「そんなの、瀬戸さんに関係ないじゃん。聞いてどうしたい訳?」
「だって、湊くんも凪沙もそんなことする人じゃなかったっ!!」
「何言ってんの?俺はそういう人間だよ。」
「ふざけないでっ!!そんなの凪沙の気持ちを踏みにじってるのと一緒じゃんっ!!好きでもない女の子に、そんな事するのだけはっ……絶対に許さないっ!!」
私のその叫びに、湊くんはピクリと反応を示す。
そして、ボソッと告げる。
「……ふーん?じゃあ好きだったら良いんだな?」