本当の君を好きになる
「……だから言ったんだよ。」
ふいに緩んだ力。
でも、私は逃げようとはしなかった。
「これ以上、首突っ込むなって……。」
湊くんは、そう言うと私の体をギュッと抱き締めた。
私は訳が分からないまま、彼の鼓動と体温を感じていた。
先ほどまでの恐怖はどこへ消えたのか……。
今は、彼の全てが心地良い。
「……湊……くん……?」
「逃げてよ。……すがりたくなる。」
「……逃げないよ。」
私は、そっと彼の背中に手をまわした。
彼は、さらに腕の力を強めてきた。
「……瀬戸さん……ごめんねっ。」
彼の声が震えているのが分かる。
私は、何度も何度も頷いた。