本当の君を好きになる




***




「──どこまで知ってるの?」



人の温度に触れて少し落ち着いたのか、湊くんは冷静に尋ねてくる。

廊下側の壁に寄りかかって座り、窓の外を眺める。





「そんなに知らないよ?花火大会の時、一緒にいた女の人は、新しいお母さんだってこと。今、一緒に暮らしていること。あとは、湊くんが家に帰りたがらないのは、お母さんのことを受け入れきれてないんじゃないかなぁとか?」




「……なるほどね。」





そう返事をしながら、湊くんはまたソワソワし始める。

不安なのだろう。





「……まあ、確かに受け入れきれてはいないと思うよ。本当に突然のことだったし。春哉は随分と、あの人のこと気に入ってるみたいだけど……。また、前と同じことになるんじゃないかって不安で……。」



「前と同じこと……?」



「……うん。あの人、妊娠してるんだよ。来年の1月には生まれるらしい。……今まで言ってなかったけど、春哉と俺は、それぞれ違う母親から生まれてきたんだ。」



「……え?」






あまりの驚きに、湊くんの方を向く。

彼は、片手で顔を覆い、辛そうな様子だ。





「俺の母親は、俺が小さい時に亡くなったんだけどね。記憶にもないよ。……春哉の母親は、春哉を生んでからすぐに離婚して、家を出ていった。それ以来、おばあちゃんが、ずっと俺たちの面倒を見てくれてる。」



「……お父さんは?」






私がその言葉を発した時、彼の表情はさらに苦しそうに歪む。





「アイツは……何を考えてるのか分からない。新しい奥さんが出来る度に帰っては来るけど、ほとんど会話なんてしないし。子育てなんて、本当に関わってないだろう。……全てをおばあちゃんに押し付けて……無責任な奴だよ。」



「……そうだったんだ。」



「……だから、今回も不安でね。また子供が生まれたら離婚して……更におばあちゃんの負担が増えるんじゃないかって。それを考えると、あの人の事も認められなくてさ……。最近家に帰りたくないんだ。」






少しずつ語られる事実に、私は胸が一杯になる。


こんなことを、一人で抱え込んでいたなんて……。



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