本当の君を好きになる
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「……直登?」
可鈴の困惑した表情。
でも、今の俺にはその表情にイライラしてしまうほど、全く余裕がない。
可鈴を抱き締めた瞬間に感じた違和感。
可鈴の体からは、香水の香りがした。
普段、可鈴は香水なんてつけない。
しかも、その香りに覚えがあった。
……桐谷がいつもつけている香水だ。
「……遅れるから、早く教室戻ろう。瀬戸さん。」
「え?あ、うん……。」
可鈴の顔が見れない。
変な汗が流れて、色んな考えが頭を巡る。
可鈴は俺の言葉に対して、謝罪をした。
でも否定は全くしなかった。
桐谷の精神状態もおかしかったし、1時間目は、丸々いなかった。
何もなかったと言い切れるか?
でも、可鈴に限って、桐谷に限って、そんなことは……。
そう思いながらも疑ってしまう自分がいる。
はぁ……。ダメだ。モヤモヤする……。