本当の君を好きになる
話をしよう
***
カチャリ……。
静かに玄関の扉を開けると、中にそーっと入る。
辺りは、すっかり暗くなっていた。
制服のネクタイを緩めながら、靴を脱いでいると、こちらに向かって歩いてくる音が聞こえる。
靴紐をほどきながら、俺はわざとその人物を確認しないようにしていた。
「おかえり湊くん。……遅かったんだね。」
「……そうでもないけど。」
顔も見ずに受け答えをするが、誰かはすぐに分かる。
さすがに失礼か……と思い、顔をあげた瞬間、俺は固まった。
「……湊。ちょっと来なさい。」
偉そうに腕を組み、威圧的な態度でそう告げる。
綺麗に磨かれた革靴があったから、嫌な予感はしていた。
セットされた髪の毛、高そうなスーツ。
眼鏡の奥を光らせたその人。
厳しい表情のまま、先にリビングへと入っていった。
俺は、渋々父親の後ろをついていった──。
「……座りなさい。」
いつも食事をするテーブルにつけと言われ、俺は父の真正面に座る。