本当の君を好きになる
「ここ最近、学校に行ってなかったらしいな。今日、担任の先生が心配して連絡してきた。お前は、今一番大切な時期じゃないのか?そんな奴が学校に行って勉強しなくてどうする。」
俺は父の目を見ず、ひたすら俯く。
心配したのか、あの人もテーブルの近くに寄ってきた。
「ろくに家にも連絡しないで帰って来ずに……家族にもたくさん心配かけて。申し訳ない気持ちはないのか?皆、どれだけ心配したか──。」
「──うるさいな。」
自然とその言葉が出ていた。
父は俺の言葉に、話すのを止めた。
「今まで、ろくに子育てしてこなかった奴が口挟むなよっ!!俺がどんな思いでいたか──」
──ドンッ!!!!
机を叩いた音が響く。
俺は目を見開いて固まる。
両手で机を思いきり叩いたのは、父ではなくあの人の方だった。
肩をプルプルと震わせ、そして顔を上げると俺の顔を睨み付ける。
その目には、涙がいっぱい浮かんでいた。
「どれだけ怒っても良いけど、その言葉だけは許さないっ!!子育てしてないっていう、その言葉だけは絶対に許さないからっ!!」
あの人が、叫ぶと父は立ち上がり彼女の肩を持つ。
「お前は何も言わなくて良い。」
「何言ってるのっ!?あなたたちこのままで良いと思ってるのっ!?」
「良いからもう喋るな。」
父は彼女の肩を持ち、そのまま歩き出す。
そして、リビングを出るところで一度立ち止まると俺に告げる。
「今の言葉は気にしなくて良い。……とりあえず、おばあちゃんには心配かけて悪かったぐらい言っておけよ。」
そのまま出ていく二人の背中を見ながら、俺は全く動くことが出来なかった。
俺は、考えることをやめてテーブルに突っ伏した。