本当の君を好きになる
「話したいことなんて言うから、もっと重要な話かと思ったら……世間話か。まあ良いだろう。」
「……仕事どうなの?やっぱり大変?」
「そりゃあな。大変じゃない仕事なんて無いだろう。お前もいずれ分かるさ。」
「そうだよね。」
少しの沈黙を挟み、再び質問する。
「……楓奈さん……とは、会社で知り合ったの?」
「え?あ、ああ。楓奈は俺の部下でな。その内にお互いに惹かれ合って……結婚した。」
「……いい人そうだよね。」
「いい奴だよ。」
再び少しの沈黙。すると今度は父が質問をしてきた。
「学校楽しくないのか?」
「……え?」
「最近学校に行ってなかったみたいだから……何か気に入らないことでもあったんじゃないか?」
「……学校は楽しいよ。いい友だちも出来たしね。」
「……そうか。」
そう話をしながら、お互いの口角が少し上がっているのが分かった。
何でもない会話。
他愛もない話。
でも、今の俺たちにはそれで十分だった。
その時、父親の携帯が鳴り響き、リビングから出ていった。