本当の君を好きになる




楓奈さんの言葉に、父はうわずった声で答えた。

そして、先ほどまで読んでいた新聞を手に取ろうとした瞬間に、俺は声をかける。




「──父さん。」




そして、ポケットから祖母にもらったあの通帳を取り出した。

テーブルの上に、通帳を置くと父は目を丸く見開いた。





「ばあちゃんから全部聞いた。……俺のために貯めてくれてたんだって……?」




自分の声が少し震えている事に気づく。

それでも、自然と言葉が出てきた。





「……俺、何も知らないからさっ……。ずっと、父さんのこと誤解してたよ……。」




「……。」





父は少しの間黙っていたが、ゆっくりと話し始めた。





「……お前にはたくさん迷惑かけた。子育てしてないなんて言われても、俺は何も言い返せないんだ。
だが、湊の事や春哉の事を考えない日なんてなかった。いつも気にしていた。」





何だこれ。目頭が熱い。
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