本当の君を好きになる
卒業式





「本日は私たち、卒業生のために、このような式典を挙げていただき、まことにありがとうございます。

また、ご多忙の中ご出席くださいました、御来賓の皆さま、校長先生はじめ先生方、並びに保護者の皆様に、卒業生一同、心から御礼申し上げます。」





厳かな雰囲気の中、卒業生代表、桐谷湊くんの答辞が読まれる。



そう。今日は私たちの卒業式だ。





「……さて、ここで少し個人的な話をさせて頂きたいと思います。」










あれから私たちは、前より更に絆が深まったように感じた。

湊くんは、あの一件以来本当に明るくなったし、前より更に勉強を頑張るようになった。



そして、それぞれが希望の大学に合格し、それからは5人でたくさん遊んだ。



5人の中で進路が決まるのが一番遅かったのは、予想通り私だったが、その分皆からたくさんお祝いをしてもらえた。




そんな大切な仲間と、学校で一緒にいられるのも、今日で最後なんだよね……。











「──僕は子どもの頃から、学校という場所が嫌いでした。転校が多かった僕にとって、友だちは必要のない存在だったからです。仲良くなっても、すぐに別れが来るのであれば、友だちなんて始めから作らなければいい。そんな考えをするようになりました。」






堂々とそう話をする湊くんは、全く原稿を見ることなく、真っ直ぐ前を向いて話をする。



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