本当の君を好きになる
「──井上さん。」
そこへかけられた声。
私たちは一斉に、その声のした方へ視線を向ける。
そこには、いつもチャラチャラしていた、クラスメイトの男子が立っていた。
視線を泳がせながら、髪を触っており落ち着かない様子だ。
「……な、何でしょうか?」
「……あー、卒業するから言うんだけどさ、俺実はずっと井上さんのこと好きだったんだよね。」
「「「え!?」」」
3人揃って、全く同じ反応をする。
てか、告白するなら凪沙を呼び出すくらいしろっての……!!
私と樋野くんはどうすれば良いっていうのよ……!?
「……あ、えっと……そのっ……あの、私──」
凪沙がそこまで言ったところで、私たちは全員固まった。
凪沙の前に立ちはだかるのは、先ほどまで告白を受けていた筈の湊くんの姿。
「──ごめん。井上さんは、俺が先約入れてるから、ちょっと借りていっても良いかな?」
「……え?」
呆気にとられる私たちを置いて、凪沙に向かって微笑みかける色男。
凪沙はポッと頬を赤く染める。
そして、彼は凪沙の腕を掴んで教室を出ていってしまった。