本当の君を好きになる





「──井上さん。」




そこへかけられた声。

私たちは一斉に、その声のした方へ視線を向ける。

そこには、いつもチャラチャラしていた、クラスメイトの男子が立っていた。


視線を泳がせながら、髪を触っており落ち着かない様子だ。




「……な、何でしょうか?」



「……あー、卒業するから言うんだけどさ、俺実はずっと井上さんのこと好きだったんだよね。」



「「「え!?」」」





3人揃って、全く同じ反応をする。

てか、告白するなら凪沙を呼び出すくらいしろっての……!!

私と樋野くんはどうすれば良いっていうのよ……!?






「……あ、えっと……そのっ……あの、私──」






凪沙がそこまで言ったところで、私たちは全員固まった。

凪沙の前に立ちはだかるのは、先ほどまで告白を受けていた筈の湊くんの姿。





「──ごめん。井上さんは、俺が先約入れてるから、ちょっと借りていっても良いかな?」






「……え?」






呆気にとられる私たちを置いて、凪沙に向かって微笑みかける色男。

凪沙はポッと頬を赤く染める。




そして、彼は凪沙の腕を掴んで教室を出ていってしまった。



< 297 / 308 >

この作品をシェア

pagetop