本当の君を好きになる
「──ちょっ……ちょちょちょっ……桐谷くん!!」
体育館裏まで来たところで、私は思いきり彼の手を振り払う。
肩で息をする私を涼しげな表情で、彼は見つめていた。
「ごめん。井上さんが告白されてるの見たら何か居ても立ってもいられなくなってさ。連れ出しちゃった!」
イタズラっぽく笑う彼に、私は内心『はぁー!?』と思っていた。
それでも、この高鳴る鼓動をおさえることは出来ない。
「……でっ、でもっ!!さっきの女の子たちは、ほっといて良かったの!?」
「え?あー、それより井上さんと話す方が大事かなーってね。」
「……何それっ……!!」
涙腺がまだ緩んでいるからか、涙が滲んでくる。
「また、期待するようなこと言ってはぐらかして……桐谷くんの本当の気持ちはどこにあるのっ!?最後の最後まで期待させないでっ!!私もそろそろ前に進み──」
ギュッと彼の腕に包まれる。
優しいあの香りが、心地よい体温が……私の思考を鈍らせていく。
「俺もだよ。前に進もうとしてるのは……。」
掠れた声でそう呟く彼。
その声に、また涙が滲んできた。
「……今さらこんなこと言うのずるいかもしれないけど……。」
「……へ?」
「──好きだ。」