本当の君を好きになる
そのまま、握られていた手は離され、気づけば桐谷くんの背中が小さくなっていた。
私は、ポカンとして、その場で立ちすくむ。
……分かってるよ?……何が?
何だかスッキリせず、胸の辺りがモヤモヤする。
分からないけど、本当に分からないけど涙が込み上げてきた。
直登が、あんな風に言われてしまった事もあるだろうし、桐谷くんの様子も少し変だったからかもしれない。
すると、そんな私の様子を見てか、直登は私の頭にタオルをバサッとかけてくれた。
直登の香りがする……。
私は、そのタオルをギュッと握りしめて、再び歩き始めた。
直登は、それ以上何も言わなかった。