本当の君を好きになる
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キーンコーンカーンコーン──。
授業開始の合図の、チャイムが鳴り響く。
ふと、直登の席の方に目線を移したが、そこに彼の姿は無かった。
直登……一体どこに行ったんだろう……?
私がそう考えていると、女子生徒のひそひそ話が聞こえてきた。
「幸坂くん、朝はいた筈なのにどこ行ったんだろう?」
「そういえば、今朝隣のクラスに行ってなかった?」
「隣?ああ!そういえば、桐谷くんとどっか行ってたね!!」
「あの二人が揃うなんて、夢みたい……!って皆話してたもんね!」
「でも、二人で何してるんだろう?」
「だよねー。」
その話を聞いて、私の不安は更に大きくなった。
今朝のあの二人の状態で、どこかへ行った……?
直登も、桐谷くんも一体何を考えているんだろう?
と、その時、教室の扉がガラガラと開いた。
皆の視線は、そこに注がれる。
扉を開けたのは、直登だった。
明らかに不機嫌で、いつもの王子スマイルは無い。
皆も、少し戸惑っている様子だ。
「幸坂くんが遅れるなんて珍しいわね?早く席に──」
英語教師がそう言った瞬間、直登は被せ気味で答える。